現在、日本で使用されている木材の60%以上は海外から輸入しています。国産木の使用の減少は、日本の林業の衰退につながるだけではなく、森林の荒廃から土砂災害など重大な問題を引き起こす原因にもなります。
「日本の森林環境問題を解決したい」、そんな思いから始まったのが「CLT」の活用です。
そこで今回は、CLTとは何か、CLTの特徴やメリット、デメリットを分かりやすく解説します。
CLTとは「Cross Laminated Timber」の略称です。1995年頃からオーストリアを中心に発展した木質系材料で、ひき板(ラミナ)を並べ、 繊維方向が直交するように積層接着した建材です。
「国産木材を使用したCLTで容易に家を建てることができれば、林業者や森林の諸問題に対して有効な解決方法となり得るのではないか」、このような思いから、SAIグループホールディングス株式会社は2017年4月、CLTを用いた構造体の研究と開発を開始しました。
2018年5月にCLT CELL UNIT(CLTセルユニット) 実験棟を建て、2019年8月にはCLTを用いた「箱型建築物ユニット及び建築物」として特許を取得しました。
日本の大工技術を応用してCLT板を木材のみで接合して箱型を形づくり、建築物の躯体として機能できるようにユニット化を進めてきました。100体以上の実験を行い、耐震等級3を超える強度が実証されています。
現在は、世界初の箱型建築物ユニット「CLT CELL UNIT(CLTセルユニット)」として製造を開始し、増産体制に入っています。
CLTには、以下のような特徴があります。
・強度が高い ・コンクリートよりも軽い ・断熱性が高い ・環境に優しい
それぞれ詳しく解説していきます。
CLTは、従来の集成材よりも強い木質系材料で、その強度はコンクリートにも匹敵します。
木の板の繊維が直角になるように互い違いに何層にも重ねて圧着させることで、重量当たりの引っ張り強度はコンクリートの5倍にもなると言われています。
縦1m×横3m×厚さ8.5cmのコンクリート建材と、まったく同じサイズ・厚さのCLTは、同程度の曲げ強度を有します。
しかし、2つの重さを比較すると、コンクリートは500kgですが、CLTは220kgです。
同じ強度がありながらコンクリートよりも軽いCLTを使用することで、建物の重量が軽くなり、基礎工事の簡素化が可能となります。
コンクリートでは120cmの厚さが必要な断熱効果が、CLTならわずか9cmで得られます。
CLTは一般的な木材よりも厚みがあるため、夏の暑さや冬の寒さを遮ることができるのです。
CLTは構造体を基礎の上に置き、連結する新工法を行うことで移築が可能です。
CLTはリユースが可能な循環型資材なので、環境にも優しく、サステナブルな社会に貢献できる資材です。
CLTは、従来パネル材として使用されるのが一般的でした。
しかし、SAIグループホールディングス株式会社は、世界初の「CLT CELL UNIT(CLTセルユニット)」という新たな建築工法・構造体を開発し、特許を取得しています。
CLT CELL UNIT(CLTセルユニット)という新たな建築工法・構造体を開発したことで、短い工期で耐震性にすぐれた建物の建築を実現しています。
CLTパネル工法とは、鉄骨や木材で縦横の骨組みをつくったうえで、CLTパネル材を組み合わせて建築する工法です。
骨組みは現場で作る必要がありますが、加工済みのCLTパネルを組み合わせることで工期を短縮することが可能です。
CLTユニット工法とは、箱状に加工されたCLT CELL UNIT(CLTセルユニット)を組み合わせて建築する工法です。
基礎の上に箱状に加工されたユニットを組んで連結させるため、積み木のように積み上げ、並べることも可能です。
骨組みを作らずにユニットを組み合わせて建物を作ることで、CLTパネル工法よりもさらに納期を大幅に短縮することができます。
CLT建築の最大のメリットは、日本の森林資材を有効に利用できることです。
山林を守るためには適度に伐採する必要がありますが、太さが足りないものや節の多いものは建材としてはあまり適していません。
ですが、CLTは、板を圧着させて使用するため、従来は建材として利用しにくかった木材も使用することができます。CLTの普及は、日本の林業を守ることにもつながるだけではなく、木材を有効活用することで、森林保全や土砂災害などを防ぐ効果も期待できます。
ほかにも、CLT CELL UNIT(CLTセルユニット)を活用した建築・住宅には、以下のようなメリットがあります。
構造体であるCLT CELL UNIT(CLTセルユニット)は、工場で組み上げられて現場に運ばれます。
現場では、基礎の上に運ばれてきたユニットを据え置き連結させるだけなので、通常の工期と比較すると約1/3まで短縮することが可能です。
通常の建物はもちろん、緊急災害時の仮設住宅や医療施設など、緊急時の対応にも役立ちます。
CLT CELL UNIT(CLTセルユニット)は箱型ユニット構造体です。ユニット単体での使用はもちろん、複数のユニットを「並べて使う」「重ねて使う」「組み合わせて使う」など、発想次第でさまざまな建築物への利用が可能です。
CLT CELL UNIT(CLTセルユニット)は、100体以上の実験を行い、耐震等級3を超える強度を実証して特許も取得しています。
そのため、CLT住宅は、耐震性に優れているというメリットもあります。
耐震等級3とは、耐震等級1の1.5倍の地震力に耐えられる強度で、災害時の救護活動の拠点となる消防署・警察署・役場などの建物の基準となる耐震等級です。
森林浴に行き、木の香りに包まれるだけで心が癒された経験があるという方も多いのではないでしょうか。
木材には、心地よさや落ち着きを高めるリラックス効果があります。
木の香りや温もりが感じられるCLT CELL UNIT(CLTセルユニット)で建てられた建物は、働きやすい環境づくりにもつながります。
CLT CELL UNIT(CLTセルユニット)を活用した建築・住宅は、基礎の上にユニットを連結させているため、リユースが可能です。
CLT CELL UNIT(CLTセルユニット)で建築した仮設店舗や仮設事務所なら、別の場所に移動して再利用するという使い方もできるのです。
また、日本政府もCLT需要の拡大に向けた環境整備を進めており、その一環として補助金や助成金などの支援を行っています。補助金や助成金を活用することで、さらにコストを抑えた建築が期待されています。
CLTは1995年頃からオーストリアを中心に発展した木質系材料ですが、唯一、コストが高い点がデメリットと言われていました。
しかし、SAIグループホールディングス株式会社が開発したCLT CELL UNIT(CLTセルユニット)は、CLTのデメリットを払拭し、低コストでの製造を実現しています。
日本ではCLTに関する取り組みはまだ始まったばかりですが、日本の林業や森林再生につながる新しい工法として注目されてきています。CLT CELL UNIT(CLTセルユニット)が今よりも幅広く利用されるようになれば、今後はますます低コストでの製造が可能となるでしょう。
現在、日本の木造建築の多くは輸入材が使用されており、国産材の使用が減少し、結果としてそれが森林の放置につながっています。逆に海外では市場を優先した森林の違法伐採や過剰採取、森林火災などのさまざまな森林問題が起こっています。かつての日本では木材自給率は80%近くありましたが、現在は60%以上が輸入材を使用しているという現状があります。
木造の建物は、木材の香りや視覚的な癒し効果が高く、あたたかみのある空間は木造の建物ならではの魅力です。
CLTの活用は、森林資源の循環利用を高め、国内外の森林環境を改善し、持続可能な社会作りに役立ちます。
SAIグループホールディングス株式会社では、「CLT CELL UNIT(CLTセルユニット)の普及が豊かな日本の森林を取り戻す大きな一歩となる」、これは建築業界の使命だと考えています。
CLT CELL UNIT(CLTセルユニット)を活用し、私たちと一緒に日本の環境と未来を変えていきましょう。